図書館展示企画 2013年度 第1回
タイトル: ヴェネツィアの工芸品
期 間: 2013年4月~6月
担 当: 人間文化学科 准教授 武田 好
その昔、海洋都市国家として発展し、地中海を
中心にオリエント、アラブの諸地域とヨーロッパの
文物の交易によって富み栄えたヴェネツィアは、
今も魅力あふれる街であり続けています。
ガラス、レース、仮面などの工芸品は観光客の
土産品としてその歴史の面影を残しています。
今回の展示では、特にガラスの小物、レースを
ご紹介しましょう。
ヴェネツィアのガラスの歴史は、文書としての
記録は10世紀末にさかのぼります。
13~14世紀にガラス産業は成長し、ガラス
職人組合が作られました。ヴェネツィアのガラス
製品はヨーロッパ各地に輸出され、高級工芸品
としての地位を得ます。重要な産業であるガラス
製造の技術を守るために、ガラス職人たちは
ヴェネツィア本島沖合にあるムラーノ島に
移住させられました。
今日、ムラーノ島にガラス工房が集まって
いるのはそのためです。15~16世紀に
ヴェネツィア・ガラスは黄金時代を迎え、
ヨーロッパの貴族たちに珍重されました。
ヴェネツィア・ガラスを用いたアクセサリー。
ビーズのネックレス・イヤリングや指輪、
ブレスレット、ムリーネ(棒状の色ガラスを
切断し、型に並べてさまざまな模様を作ります)
のペンダントトップ、ガラスペン、オブジェなど。
もうひとつ、ヴェネツィアで知られるのは
レースです。レースの歴史も古く16世紀には
ヨーロッパでベルギーと肩を並べるレース生産
国となりました。
ヴェネツィア・レースは17世紀にはガラス製品
と同様にヨーロッパ中を席捲します。王侯貴族
たちがレースを身にまとい、その豪華さを競い
合った時代には、ヴェネツィア・レースの技法が
各地域に影響を与えました。また、貴婦人の
趣味としても好まれました。西洋絵画を見る
ときは、ぜひ肖像画に細密に描かれたレースに
注目してください。現在もなお、ヴェネツィア
本島沖合にある漁師の島ブラーノ島で、
女性たちがその技術を守り伝えています。
ブラーノ島のレース博物館では、その繊細、
かつ華やかで優美なレースの作品を見学
することができます。
特に、すべてレースで作られたウェディング
ドレスは、一針ひと針心をこめて刺した女性
の姿を思い起こさせます。
そのウェディングドレスは、日本でも展示され、
ヴェネツィア・レースの素晴らしさが技法とともに
紹介されました。
ニードル・レースの技法で
何時間もかけて出来上がった蝶と花弁、
19世紀末のアンティークレースの飾り。