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2025年12月 3日 (水)

【図書館】展示企画2025年度 第3回

タイトル: マリア・モンテッソーリについて④

      ー幼児に向けた文字学習のための教具ー

期間: 2025年12月~2026年3月

担当: 星美学園短期大学 教授 井出麻里子

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 展示されている文章は、モンテッソーリが「書くことの爆発現象」を初めて目にした時の様子である。子どもたちが「書きことばへの最初の1歩」を踏み出したこの出来事を振り返り、彼女は「感動的な経験」に立ち会ったとして、突如として文字を書き出した子どもの姿に驚いている様子がうかがえる。 [1] 

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 そもそも文字を教えて欲しいと懇願してきたのは、子ども達の方だった。当時のモンテッソーリは、文字学習や計算は就学前の子どもにはふさわしくないと考えており、子ども達の申し出をいったんは断った。しかし、子どもばかりでなく、保護者からも要望があり、「子ども達自身が望むのなら・・・」と自身の考えを改め、幼児にふさわしい言語教育を構想することとした。1907年1月にローマのスラム街で最初の「子どもの家」が開設されたが、その年の夏になる前の出来事である。

 かつて知的障害児に読み書きを教え、一定の成果を出した経験をふまえ、夏の休暇中に教具を作り、秋から子どもたちに実践する計画を立てた。こうして、1907年11月上旬から健常児を対象とした「言語教育」の実験が行われるようになった。

 言語教育の中で、彼女がとくに力を入れたのは、「文字を書く」ことであった。彼女は「書く」という行為のメカニズムを細かく分析し、筆記具を操作する手の動きや、正しい字形を認識する視覚の洗練化、平面上で手を軽やかに行き来させるための筋肉の協働などを明らかにし、それぞれに対応させる教具を作った。

 言語教育を開始してまもなく、モンテッソーリの目の前で、「書くことの爆発現象」と彼女が呼んだ前述の出来事が起こったのである。

[1] 引用文献 マリア・モンテッソーリ著 中村勇訳『子どもの発見』日本モンテッソーリ教育綜合研究所2003年 268-270頁

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<参考文献>

  • M.モンテッソーリ著 中村勇訳 『子どもの発見』 日本モンテッソーリ教育綜合研究所 2003年
  • H.ハイラント著 平野智美・井出麻里子共訳 『【全改訂】マリア・モンテッソーリ-その言葉と写真が証す教育者像-』 東信堂 1999年

<展示されている言語教具>

・メタルインセッツ

・砂文字板

・絵カード合わせ

・移動五十音の箱(小)

・ひらがなスタンプ

図書館HP