【図書館】展示企画2024年度第2回
マリア・モンテッソーリについて③
-子どもの姿から考案された算数道具-
期間:2024年8月~11月
担当:星美学園短期大学教授 井出麻里子
モンテッソーリ教育の創始者であるマリア・モンテッソーリは、医師として知的障がい児の療育法の研究で成功したのち、就学前の健常児を対象とした教育法を開発し、いわゆるモンテッソーリ・メソッドを構築しました[1]。その後、彼女は、小学生のための教具開発に着手しました。完成した教具を実際に子ども達に紹介した際、その場にいた4歳くらいの子ども達が算数の教具に興味を示しました。小学生と同じように教具を用いて夢中になって活動する幼児の姿に彼女はとても驚き、子ども達が求めているならと、幼児向けの算数教具を制作することにしました。
4歳児はなぜ算数教具に熱中したのでしょう。一つには、その時期の子どもは、数や図形などに自然と興味をもつものだからです。幼稚園教育要領にも、日常生活の中で、数量や図形に関心をもつことに言及されています。幼児にとって算数教具は数的な興味・関心を自然と寄せる対象だったのです。
また、展示されている教具は、実際に手を動かして活動するもので、「感覚教具」と扱い方は同じです。感覚教具の「長さの棒」と算数教具の「算数棒」を比較してみると、太さ・長さはまったく同じで、「順番に並べる」という活動そのものも同じです。「算数棒」は赤と青で交互に塗られているので、「数える」ことができます。感覚教具での活動経験がある子どもにとっては、算数教具はとくに難しいものではないのです。
このように、モンテッソーリの算数の教具は、実際の子どもの姿から考案され、「動きながら学ぶ」という幼児の学び方に即して作られているのです。
<参考文献>
① M.モンテッソーリ著 中村勇訳 『子どもの発見』 日本モンテッソーリ教育綜合研究所 2003年② H. ハイラント著 平野智美・井出麻里子共訳 『【全改訂】マリア・モンテッソーリ-その言葉と写真が証す教育者像-』 東信堂 1999年
<展示されている算数教具>
・算数棒と数字カード
・砂数字版
・錐形棒
・数字と玉
・金ビーズ(1,10,100,1000の紹介)