図書館展示企画2017年度 第1回
タイトル:マリア・モンテッソーリについて①-知的障がい児との出会い-
期間:2017年4月~7月下旬
担当:星美学園短期大学准教授 井出麻里子
「モンテッソーリ教育」と呼ばれる幼児教育法があります。マリア・モンテッソーリというイタリア人女性が始めた教育法で、「モンテッソーリ教具」と呼ばれる独自の教具を使うのが特徴の一つです。モンテッソーリ教育を取り入れている幼稚園や保育園は日本全国に存在しており、本学の卒業生も毎年モンテッソーリ園に就職しています。今回は、この場を借りて、このモンテッソーリ教具がどのように生まれたのか紹介します。
マリア・モンテッソーリ(Montessori,Maria:1870-1952)はローマ大学医学部出身の医師でした。ある日、精神病患者の臨床研究をするために訪れた施設で、彼女は知的障がいの子ども達に出会います。その施設では一つの部屋に子ども達が収容されており、世話係の女性は「食事が終わると、子ども達は床を這いずり回って、食べこぼしたパン屑を拾い集め、いつまでも手のひらでこねて遊ぶんです」と嫌悪を込めて彼女に報告しました。おもちゃ一つ置かれていないその部屋を見た彼女は、子ども達は手を使った活動を求めているのだと理解しました。床を這いずり回ってパン屑を探し、見つけると手にとって遊ぶという一連の行為は、目(感覚器官)と脳神経と手(運動器官)が連関して正常に機能していることを意味します。そこで彼女は、感覚器官に刺激を与え、手を使った活動することでこの子ども達の教育が可能になるのではと考えました。
彼女は、その道の先駆者であるエドワード・セガンが確立した「治療教育学」を研究し、彼が開発した教具を改良して子ども達に使用しました。モンテッソーリが最初に作った教具の中には、五感を刺激し手を使って活動する「感覚教具」が含まれますが、それらは当初、知的障がい児のために作られたものだったのです。
参考文献
H.ハイラント著、平野智美 井出麻里子共訳 『【全改訂】マリア・モンテッソーリ-その言 葉と写真が証す教育者像-』東信堂、1999年。
展示している教具(いずれも「感覚教具」)
・円柱差し/色つき円柱:視覚を通して、円柱の大きさや太さなどを見分ける教具
・色板(第3箱):視覚を通して、色の明度を識別する教具
・触覚板:触ってみて、板の触感の違いを識別する教具
・幾何学立体:視覚を通して、基本的な立体図形の特徴を理解する教具
星美学園短期大学図書館
03-3906-0056(代)