【学長からのメッセージ2021.5】10歳の大人:リトル・トリー
私の好きな本の1つに、「リトル・トリー」(フォレスト・カーター著 めるくまーる)があります。
リトル・トリーは、インディアン(チェロキー族)の子どもで、父、母を続けて失い、5歳の時から祖父母と暮らすことになりました。
ある日、リトル・トリーは、祖父と街へ出かけます。その帰り道、リトル・トリーは、元気のない子牛に心惹かれますが、そこを言葉巧みにつけ込まれ、50セントでその子牛を買うことになります。子牛が自分のものになって、リトル・トリーの心は躍り、自慢げに祖父に見せましたが、祖父は、うれしそうな顔はしませんでした。
その子牛は、家にたどり着く前に、道に横たわり、死んでしまいました。病気だったのです。祖父は、子牛の皮を剥ぎ、リトル・トリーは、それを背負いながら、打ちひしがれて、とぼとぼと家路を辿っていきました。
夕食の時、祖父は、リトル・トリーを見つめて言います。
「なあ、リトル・トリー。おまえの好きなようにやらせてみせる、それしかおまえに教える方法はねえ。もしも子牛を買うのをわしがやめさせてたら、おまえはいつまでもそのことをくやしがったはずじゃ。逆に、買えとすすめてたら、子牛が死んだのをわしのせいにしたじゃろう。おまえは自分でさとっていくしかないんじゃよ。」
リトル・トリーは、祖父から生きる知恵を学び、祖母から読み書き算数を学びました。リトル・トリーが10歳の時、祖父と祖母が死にました。しかし、その時、すでに、リトル・トリーは、一人で生きていく力を身につけていたのです。
私たちも、心配に耐えながら子どもの判断を見守る、そういう強さを持つ必要があるのではないでしょうか。
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