【図書館】展示企画2023年度 第2回
タイトル: 写譜ペン ー浄書楽譜の変遷ー
期間:2023年8月~11月
担当:星美学園短期大学教授 町田 治
写譜ペンとは楽譜を書くためのペンのこと。楽譜を浄書(清書)するのに使用するペンである。展示①がそれ。ペン先が通常の字を書くペンより太くなっている。このペンに慣れると、通常のペンで書くより速く楽譜を書き上げることができるのである。
写譜ペンを愛用した作曲家は多い。展示②はバッハの平均律クラヴィーア曲集第2巻第13曲の前奏曲BWV882の自筆譜である。バッハの自筆譜は分かりやすく書かれ、整然とした美しさで定評がある。
展示③は私が写譜ペンを使用した最後の頃の楽譜。展示④は現在本学図書館が所蔵している写譜ペンで版下が作られた楽譜である。つい最近まで写譜ペンは現役であった。
展示⑤は現在のような楽譜ができる以前の時代の楽譜で、写譜ペンはかなり昔から使用されていたことが分かる。
現在はコンピュータ浄書ソフトが開発され、写譜ペンの出番はほとんどなくなった。かく言う私も現在①を使用することは全くない。展示⑥は浄書ソフトによる楽譜。便利できれいに仕上がり、コンピュータならではの便利な付属機能もあるため、浄書を手書きで行うことはもはやないであろう。
しかし②のような楽譜がなくなるとしたら……。これからの大作曲家の肉筆の楽譜は存在しなくなるのである。作曲家の記念館に愛用した机や椅子やPC、USBはあっても、手書きの楽譜が残らなくなるとしたら、寂しい話である。
参考資料:
②『平均律クラヴィーア曲集Ⅱ』/Johann Sebastian Bach/音楽之友社/1983
④『ドレミファ器楽〈器楽合奏用楽譜〉さんぽ「となりのトトロ」より』
/久石譲作曲,山下国俊編曲/ミュージックエイト/1990
⑤『人間と音楽の歴史Ⅲ(中世とルネサンスの音楽)第5巻多声音楽の記譜法』
/ハインリヒ・ベッセラー,ペーター・ギュルケ著/音楽之友社/1985