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2013年7月10日 (水)

星美学園短期大学図書館展示企画 2013年度 第2回

タイトル : ストラヴィンスキー作曲の三大バレエ

期  間 : 2013年 7月~9月

担  当 : 幼児保育学科 学科長 町田 治

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 世に「三大バレエ」と言えば、チャイコフスキーの「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「眠りの森の美女」を指すが、モダン・バレエの元祖、ストラヴィンスキーの作曲した三大バレエ「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」を挙げる方もおられるかもしれない。

 この3曲は、それまでの音楽がいかに感情を豊かに表現し、時に大げさなまでに感情を描き尽せるか、ということに目が向けられていたのに対して、シャープでドライ、明と暗、静寂と狂乱の急激な対比、心情に添うのではなく分裂的に展開する音楽で、発表当時は大変衝撃を与えたのであった。絵画で言えば、ピカソを思い出すとよいかもしれない。現在では、20世紀に書かれた音楽の中でも最も人気の高い作品となっている。

 その音楽は、大編成のオーケストラのために書かれている。音楽の裏側である楽譜を覗いて頂きたい。一見好き勝手に鳴っているかのように響く音は、精緻に計算された音で、扱う演奏家にとっては、緊張を強いられるが、プロの演奏家の手にかかると豊穣な音となって私たちを魅了する。
 
note 「火の鳥」~カスチェイ達の凶悪な踊り~
 この曲を知ったのは小学生の頃(昭和40年代前半)。テレビ漫画で「ローン・レンジャー」という番組の冒頭部分で使われていた。西部劇で、アメリカの荒野の背景にこの曲が鳴るのである。これから事件が起こりそうな不吉な感じとよくマッチしていた。ちなみにこの番組はロッシーニの「ウィリアム・テル」序曲のファンファーレがタイトル曲として使われており、一般にはこちらの方で印象に残っているのではないだろうか。

note 「ペトルーシュカ」~ロシアの踊り~
 明と暗、弱と強、表と裏、純情と邪悪、静寂と咆哮。「ペトルーシュカ」では音楽にもストーリーにも登場人物(人形?)にも対比が張り巡らされている。対比の間にある深淵に吸い込まれるかのごとく音楽は一気に進んでいく。深淵にあるのは言い知れぬ不安であり、音楽が終わった後の余韻として慄然と迫るものがある。この曲もこの部分の音だけ聴けば滅茶苦茶に楽しい。  

note 「春の祭典」~いけにえの踊り、えらばれた乙女~
 ストラヴィンスキーの三大バレエの中で、最もショッキングな作品、と言うより、20世紀に書かれた音楽作品の中で、と言っても過言ではないだろう。その初演からして大スキャンダルであった。「白鳥」で有名なサン=サーンスは、開始5分で席を立ったという。客席は大騒ぎになり、舞台もどうにもならなくなったが、オーケストラは奇跡的に最後まで演奏し通したという。初演の指揮を担当したのは、名指揮者ピエール・モントゥー。
 楽譜は曲の大詰め、“いけにえの踊り”の最後、曲全体の終わりの部分である。1小節毎に拍子がめまぐるしく変わる難所。日本初演では、指揮者が台の上から演奏する楽員に「どこだ! 今どこだ!」と言いながら楽譜をあちこちめくっていたという。たぶんこのあたりではないか。
 曲は、演奏者にとって難曲中の難曲であるが、時代と共に受け入れられてきた。現在ではアマチュアのオーケストラでも演奏し、指揮者も暗譜で振って当たり前になった。しかし音楽の持つ原始的なエネルギー放射は、今も失せていない。

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