【図書館】展示企画2020年度 第3回
タイトル:児童文学を読む楽しみ
―原作と子ども向けの作品と―
期間 :2020年12月~2021年3月
担当 :星美学園短期大学教授 武田 秀美
『岩波少年文庫』という児童向けの世界の文学作品を刊行している図書のシリーズをご存じでしょうか? このシリーズは、2020年をもって何と創刊70周年を迎え、現在約400点近くに及ぶ作品を刊行しています。
皆さんの多くは、子ども向けの絵本やディズニーによるアニメや映画などを通して、たとえば、「人魚姫」(アンデルセン作)、「ラプンツェル」(『グリム童話集』)、『ふしぎの国のアリス』(ルイス・キャロル作)といった作品に既に触れていることと思いますが、絵本やディズニー作品は、原作を別の作者が子ども向けに簡略化して書き直したり、登場人物やストーリーを改変したりした作品として成立しています。
これらの絵本やディズニー作品を楽しむとともに、初めに紹介した『岩波少年文庫』における、原作が忠実に翻訳された文章を読んでみると、それぞれの作品に描かれた作者のテーマや表現のすばらしさなどを知り、味わうことができます。たとえば、アンデルセンの「おやゆび姫」(『アンデルセン童話集1』2000年6月)では、情景が美しくありありと表現されていることや、おやゆび姫の心情 ―他者へのやさしさや思いやりなど― が生き生きと細やかに描写されていることがわかります。
原作を踏まえ子どもたちにわかりやすくリライトされた文章と絵による絵本とともに、小学生や中学生が独りで読むことのできる『岩波少年文庫』のシリーズで、多くの児童たちに、古今東西のすぐれた昔話や童話やファンタジーなどの伝承や創作の楽しさを知ってほしいものです。
【参考文献】
①岩波少年文庫『アンデルセン童話集1』大畑末吉 訳 2000年6月
②岩波少年文庫『グリム童話集(上)』出久根育 絵、佐々木田鶴子訳 2007年12月
③岩波少年文庫『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル作、 脇明子訳 2000年6月
④『母と子のおやすみまえの小さな絵本 アンデルセンどうわ』 早野美智代著, 渡辺弥生 監修 2015年3月