【図書館】展示企画2021年度 第1回
タイトル: マリア・モンテッソーリについて②
-「注意力の集中現象」の発見 -
期間 :2021年4月~7月
担当 :星美学園短期大学准教授 井出麻里子
先日、映画「モンテッソーリ 子どもの家」(2017年、フランス)が日本で公開されました。舞台は北フランスにあるモンテッソーリ幼稚園のとあるクラス。2歳半から6歳までの28人の子ども達の園生活を監督のカメラが追い、見事なドキュメンタリーに仕上がっています。
この教育法を編みしたのは、マリア・モンテッソーリ(Montessori, Maria : 1870-1952)というイタリア人女性でした。医師としてのキャリアをもつ彼女は、1907年、ローマのスラム街に作られた幼児施設で、以前、彼女が知的障害児のために考案した「教具」を健常児に適用するという「実験」を行いました。部屋の中に子どもが好む玩具と一緒に「教具」も並べておき、子どもたちの行動をひたすら観察し続けたのです。
ある日、後に「円柱差しの女児」と呼ばれる出来事に遭遇します。3歳位の女児が「円柱差し」という教具に熱中していました。つまみのついた小さな10本の円柱を、同じサイズの穴に、はめ込んでは抜いて、またはめ込んでいくという単純な作業を黙々と行っていたのです。あまりに真剣な表情で熱中している女児の姿に、直観的な「何か」を感じたモンテッソーリは、他の子どもたちに合唱をさせたり、椅子ごと女児を机の上に持ち上げたりして、妨害してみたのですが、いずれも失敗に終わりました。やがて女児は、自身のタイミングでぴたりと作業を止めると、あたかも深い眠りから目覚めたかのように幸福そうにあたりを見わたしました。その後、この女児は、以前より落ち着き、おだやかになり、大人に打ち解けるようになり、内面的な成長をとげました。
「注意力の集中現象」とモンテッソーリが呼ぶこの現象は、一定の条件の下で、どの子どもにも生じることが分かってきました。彼女はこの「注意力の集中現象」こそすべての教育の鍵であると確信し、子どもに集中現象を引き起こす条件について研究を進めました。その結果、生まれたのが、数々の「モンテッソーリ教具」なのです。
件の映画の中でも、子どもたちが教具への集中を通して、自分自身を築き上げていく印象的なエピソードがいくつも登場します。展示している教具は、「円柱差し」をはじめとして、映画の中に登場するものです。
<参考文献>
① M.モンテッソーリ著 中村勇訳 『子どもの発見』 日本モンテッソーリ教育綜合研究所 2003年
② M. モンテッソーリ著 鷹觜達衛訳 『幼児と家庭』 エンデルレ書店 1971年
③ H. ハイラント著 平野智美・井出麻里子共訳 『【全改訂】マリア・モンテッソーリ-その言葉と写真が証す教育者像-』 東信堂 1999年
前回の展示はこちら 「マリア・モンテッソーリについて① -知的障がい児との出会い-」(2017年4月)
星美学園短期大学ブログ: 図書館展示企画2017年度 第1回 (seibi.ac.jp)
展示している教具
- 円柱差し
- 豆の空け移し
- メタルインセッツ
- 砂文字板
星美学園短期大学 図書館