【図書館】展示企画2025年度 第2回
タイトル:
読み継がれる「イワンのばか」
輝き続ける「古典」
期間: 2025年8月~11月
担当:星美学園短期大学 学長 阿部 健一
トルストイ作「イワンのばか」は、1885年9月ごろに書かれ、翌1886年に発表されました。そして、日本に紹介されたのが1902年(明治35年)、今から123年前1)で、それ以来今日まで読み継がれています。たとえば、岩波文庫の「イワンのばか」2)は、1932年、今から93年前に発刊され、未だに現役で書店に並んでいます。また、2020年になって新しい翻訳が出版されていますし3)、2024年には、1927年に出版された「トルストイ童話集」4)(「イワンの馬鹿」が収録されている)が、98年の時を経て復刻されています。5)まさに「イワンのばか」は、押しも押されもせぬ、燦然と輝き続ける“古典”なのです。
ただ、少し誤解されてきた面があります。それは、“子どもの読み物”であるかのように扱われてきたことです。たとえば、絵本として取り上げられたり6)、子どものための名作全集に収録されたり7)8)という具合です。もちろん、それはそれで悪いことではありません。子どもの心の中に、小石のように何かが残れば、それはそれで意義のあることだと思います。しかし、それでも、「イワンのばか」は、大人こそが読むべきお話なのです。9)
大人の読者を想定しているのが岩波文庫ですが、93年前の訳文で、やや時代にそぐわなくなっています。そこで、お薦めは、小山由訳の「イワンの馬鹿」です。ぜひお読みいただき、この短いお話が、なぜ古典として読み継がれているのか、考えていただけたらと思います。
引用文献
1)法橋和彦(2021)古典として読む「イワンの馬鹿」巻末文献目録.未知谷,p.317
2)L.トルストイ(中村白葉 訳)(1932).イワンのばか.岩波文庫
3)L.トルストイ(小宮 由 訳)(2020).イワンの馬鹿.アノニマ・スタジオ
4)L.トルストイ(水谷まさる 編訳・川上四郎 挿画)(1927).トルストイ童話集.富山房
5)L.トルストイ(水谷まさる 編訳・川上四郎 挿画)(2024).トルストイ童話集(復刻版).富山房企画
6)L.トルストイ(長谷川露二 絵・久米元一 訳)(1957).イワンのばか(講談社の絵本).講談社
7)L.トルストイ(松谷さやか 訳)(1978).イワンのばか(子どものための世界名作文学15).集英社
8)L.トルストイ(宮川やすえ 訳)(1982).イワンのまぬけ(少年少女世界名作全集38).ぎょうせい
9)町田宗鳳(2008).愚者の知恵―トルストイ「イワンの馬鹿」という生き方―.講談社+α新書
「学長先生おすすめ!」コーナーの本は借りられます。