【学長からのメッセージ2022.9】「まあ、いいか」について(教師編)
星美学園短期大学
学長 阿部健一
25年くらい前の、ある専門学校に勤めていたときの話です。その専門学校は、男女共学で、保育士と介護福祉士を養成していました。
服装・髪型は自由でしたので、高校を卒業したばかりの新入生は、お花畑のように色とりどりの髪でキャンパスを行き交うのでした。しかし、それも、最初の実習が始まるころには落ち着いて、みな元の黒い髪に戻っていきます。なぜなら、髪を染めているだけで、実習先からマイナス評価を受ける可能性が、当時は、あったからです。そのため、先生方は、実習が近づくと、髪の毛の色を元に戻すよう指導していました。もちろん、髪を黒くしなくても実習に行くことはできます(髪の毛の色で実習ができないなどあり得ないので)。しかし、学生たちは、みな、先生方の勧めに従って髪の毛を黒に戻していたのでした。
ところが、その指導に従わない学生(男子)が現れました。大胆にも、黄色い髪のままで実習に行くというのです。理由は、要するに、「黄色の髪が黒くなってしまったら、『自分』ではなくなるから、黒い髪にはなれない」ということでした。私は、この学生からとても大切なことを学びました。それは、髪の毛の色は(多分、髪形も服装も)、その人にとっての『自分(人格)』なのだということです。そう考えると、他人から髪の色や服装を強制されたときに、自分という人間(人格)が侵害されたと感じる人がいても、けっしておかしくはないのです。
「その髪の色は、相当なハンディになるかもしれない。だから、実習態度でそのハンディを跳ね返すしかない。人より余計に、頑張るように」と話して、彼を実習に送り出しました。
実習中、実習先を訪ねました。保育園の先生方からとても良い評価を受けていました。彼は、真摯に頑張ったのです。
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