【図書館】展示企画2024年度 第3回
タイトル: 古くて新しい伝承あそび 3
―あそびを通して育つちからー
期間: 2024年12月~2025年3月
担当: 星美学園短期大学教授 打越みゆき
資格必修科目「幼児と健康Ⅰ」の授業では、実習・就職対策として、保育現場で実施したい「あそび」を数多く体験し、講義で平成29年に告示された「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」(以下、3法令)を踏まえて解説することを中心に進めています。ただ、3法令で打ち出された「子ども主体の保育」に即したものかというと、厳密には少し違う気がします。あそびを通して感じたり、気づいたり、わかったり、できるようになったりすること、気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりすること、さらには人とのコミュニケーションを築いていくことといった子どものあそびの本質を考えると、「数多く」体験するのではなく、じっくり一つのあそびを「あそびこむ」体験をしてほしいと年々感じるようになりました。
そこで本学で私が担当している専攻科の授業「特別演習 乳幼児のあそびと健康教育」では、ただひたすら「伝承遊びカード」(オリジナル検定カード)のけん玉やあやとり、コマ回しやお手玉の種目を「あそんでいる」期間を設定することにしました。以前から取り組んでいた授業内容なのですが、2年前に「資格必修に捉われない専攻科にしかできない授業をやりたい」と思うようになり、授業スタイルを大幅に変えました。90分の授業で講義の時間がなく、ひたすらあそび続けるのです。
「ずっとあそんでいていいんだ」と楽勝そうに思う学生もいるようなのですが、練習し始めてすぐ「できない」という壁にぶつかります。10回そこそこの挑戦でできるような代物ではありません。何回やってもうまくいかず、技を習得するまでに数日かかることもあり、あちらこちらから「できない」「むり~」という声が聞こえてきます。私にやり方を聞きにきたり、コツを友達と相談し始めたり…。そのうちコツを掴むのが早い学生が苦戦している友達を励まし始め、「やったーっ」という叫び声に「おめでとうっ!!」と一緒に喜ぶ様子が見られるようになります。なかには「もっと難しい技をやりたい」とスマートフォンで調べて挑戦する学生も。
そう、けん玉やあやとり、コマ回しやお手玉は「できるようになりたい」「できなくて悔しい」「どうしたらできるかな」という思いを体験でき、「やった、できた!!」という達成感を友達と共有できるあそびなのです。そして、学ぶためにあそぶのではなく、あそぶなかで自然と経験でき、育っていく力なのです。
参考文献
「幼稚園教育要領解説」(文部科学省、フレーベル館、2018年)
「保育所保育指針解説」(厚生労働省、フレーベル館、2018年)
「幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説」(内閣府・文部科学省・厚生労働省、フレーベル館、2018年)