星美学園短期大学 学長 阿部健一
「クリスマスとマリア様」
12月は、クリスマスです。
クリスマスというと、私は、マリア様のことを考えてしまいます。
ある日、マリア様の所にガブリエルという天使がやってきます。そして、マリア様に「あなたは、妊娠して男の子を産みます」と告げるのです。マリア様の心に浮かんだことは、「それはありえない」ということでした。
マリア様は答えます。
「どうしてそのようなことがありえましょうか。私は、男の人を知らないのです。」
しかし、天使は、言います。
「神様におできにならないことはありません」
マリア様は、それで納得します。
マリア様は、答えます。
「神様のお言葉通りになりますように」
そして、実際に妊娠します。
ところが、事情は、そう簡単ではないのです。
マリア様には、ヨセフという婚約者がいました。当時のユダヤ社会では、正式に結婚するまでは男女別々に暮らしていましたので、マリア様が妊娠したのは一体どういうことだということになります。もし、マリア様が婚約者以外の男性と関係を持ったということになれば、当時は、死刑にあたいすることでした。そのことは、当然、マリア様も承知されていたと思います。
そのような事情ですから、普通の人でしたら、「私にも都合がありますから、勝手にそんなこと決められても困ります」と、天使の言葉を拒絶するだろうと思います。それが、私たちにとっては、「正しい」判断であると思われるわけです。ところが、マリア様は、自分の事情など全く顧みずに、「お言葉のとおりなりますように」と答えるのです。マリア様は、神さまの思い・願いに従うことだけが正しいのだということに、一点の疑いも持たないのです。
私たち人間は、「あれが正しい」、「いやいやこれが正しい」などと議論しますが、人間が考える「正しいこと」とは、いったい何でしょうか。私たちは、日々、自分の「正しさ」をぶつけ合いながら、傷つけ合っているのではないでしょうか。
人間の分際で「本当に正しい」判断を下すことなど、残念ながら不可能なのです。ところが、私たち人間には、この真実を、素直に、謙虚に認めることができません。
私たちが、真に正しい判断ができるとすれば、それは「神さまの思い・願い」に自分の思いを重ね合わせたときだけです。マリア様は、それを、何のためらいもなく行いました。そういう意味で、マリア様は、私にとって憧れなのです。
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