【学長からのメッセージ2025.2】「亡き人と語らう(その1)」
星美学園短期大学 学長 阿部健一
「亡き人と語らう(その1)」
「その人が生きていたときよりもその人が亡くなったあと、その人との深い対話が始まるのです。」これは、ずっと昔、ある神父様が語られた言葉です。
これもずっと前のことですが、NHKのドキュメンタリー番組(2007年5月27日放送NHKスペシャル「にっぽんの家族の肖像」)の中に、Uさんという、ハンセン病療養所で暮らす老夫人が登場しました。ご主人は、脳梗塞で倒れ、寝たきりとなって同じ施設の病棟で看護を受けています。Uさんは、毎日欠かさず病棟に行って、元気に声をかけます。
Uさんのご主人は、結婚当日、強制的に断種手術を受けさせられました。Uさんは、自分に何の相談もなくそのような手術を受けた夫に対して、ずっとわだかまりを持ち続けていました。(Uさんは、子どもがほしかったのです。)
Uさんは、番組の中で、自分の結婚を「間違っていた」と語りました。
番組取材の最中に、60年間共に支え合ってきたUさんのご主人が亡くなりました。
その半年後、取材に訪れた記者に、Uさんは、亡き夫のことを、「今思うと、私を励ます役割をしてくれた、本当に優しい人でした」と語り始めました。(亡き夫について3時間語り続けたそうです。)語り終わったとき、Uさんは、晴れやかな笑顔を記者に向けて言いました。
「悔いの無い結婚というのは、こういう結婚をいうんじゃないでしょうか。」
半年間の深い対話の中で、ご主人の「見えなかった心」が、Uさんの心に、はっきりと映し出されたのだと思います。
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